
要点
・ジンベエザメを模した重厚な金属筐体とサファイアガラスによる、所有欲を満たす美しいデザイン
・5種類のイヤーピースや交換ノズル、高品質ケーブルなど充実のパッケージ
・3DD+1PDのハイブリッド構成が生む、迫力と解像度を両立した完成度の高いサウンド
・10.5mmの大型ベリリウムメッキDDによる、深く沈み込む弾力のある強力な低音域
・平面駆動特有のパリッとした高音と、滑らかで艶のある中音域の絶妙なバランス
・音の密度が高く、ライブハウスにいるような圧倒的な熱量と没入感
・(総評)分析的なモニター用途ではなく、音楽を楽しむことに特化したリスニング系ドンシャリ
まえがき
レビュー#33
今回は TRN の Whale Shark(ジンベエザメ) です。
「TRN WhaleShark」はその名の通りジンベエザメをモチーフにした深い藍色の金属筐体に、サファイアクリスタルの輝きが美しいイヤホンです。
構成は3DD+1平面駆動のハイブリッドで、迫力と明瞭さを併せ持った完成度の高い製品だと感じました。正直に言うとかなり癖に刺さりました。(なのでレビューもいつもよりやや長めです。笑)
また、付属品も充実しており、A20k帯ではかなりコスパの良い製品と言えます。
姉妹機「SHELL」のレビューもしています。
なお、今回の製品はレビューのため HiFiGo JP 様よりご提供いただきました。ありがとうございます。
この依頼に際し、製品提供以外の金品授受その他便宜の提供はございません。また、内容に関して指示等は一切なく、完全に私の知識と経験に基づき感じたままをレビューしています。
「WhaleShark」は現在 AmazonのHiFiGoストア 、 HiFiGo公式ストア で販売中です。
仕様
スペック
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ジャック(プラグ)タイプ |
3.5mm + 4.4mm |
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ドライバー形式 |
ダイナミック型(3DD) + 平面磁界型 |
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周波数特性 |
10Hz - 40kHz |
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感度 |
110dB |
| 16Ω | |
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カラー |
ダークブルー |
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ケーブル長 |
1.2m ± 3cm |
| 重量 (イヤホン本体 + ケーブル) |
約15g + 31g |
ドライバー

「WhaleShark」は3DD(ダイナミックドライバー)+1PD(平面駆動ドライバー)の構成。
低音域~高音域を3つのダイナミックドライバーが、超高音域を平面駆動ドライバーが、それぞれ担当しています。
Whale Shark IEMの両側に革新的な4ドライバーハイブリッド設計を採用しました。このペアには、3つの強力なダイナミックドライバーと1つの平面磁界ドライバーユニットが搭載されています。
10.5mmベリリウムメッキダイナミックドライバーは重低音を、8mmPETダイヤフラムダイナミックドライバーは正確で生き生きとした中音域を、6mmチタンコーティングダイナミックドライバーは鮮明で明瞭な高音域を、そして6mm自社開発の平面磁界ドライバーは超高音域において比類のないディテールと拡張性を提供します。
この4つのドライバー構成は、専門的に設計された3周波数クロスオーバーに配置され、超低歪み特性を備えた非常にクリアなサウンド再生を実現します。
※仕様情報・画像等については公式販売ページより引用
付属品や外装


「WhaleShark」のパッケージはこんな感じ。
光が当たるとホログラムのようにキラキラ輝きます。


中国語、英語で書いてある文章は「私たちの青い惑星を大切にし、海の声に耳を傾け、その色を失わせないでください」という意味だそうです。

内容物は①本体、②交換ノズル、③イヤーピース、④ケーブル(交換プラグ)、⑤ケース、⑥説明書等。
交換ノズルをはじめ、5種類のイヤーピース、交換プラグなど、充実のラインナップです。A20Kのパッケージで求められるものは大体揃っています。

② 交換ノズルは標準装備のものを含め3種類。
黒リングノズルは高音域のディテールを強調した透明感のあるサウンドプロファイル、緑リングノズルはバランスの取れたサウンドプロファイルを約束するリファレンスチューニング、そして赤リングノズルは力強く雰囲気のあるサウンドプロファイルを備えています。(公式販売ページより)
個人的な印象をまとめると…
・緑ノズル (Reference):初期装備。バランス型で完成度が高い。とりあえずこれを使っておけば間違いないと思います。
・黒ノズル (Transparent):内側のフィルターの目が粗い。高音域の減衰を抑えて高音域の抜けや明るさを強調し、全体的に少しスッキリした音になる印象。
・赤ノズル (Atmospheric):内側のフィルターの目が細かい。高音域をやや抑えることで、相対的に低音域の重みや厚みを引き立てる印象。






③ イヤーピースは5種類・各3サイズ。
フォームタイプから液体シリコンタイプまで、性格の異なるイヤーピースが揃っているので、かなり充実したチップセットだと思います。
・上段中央:低反発フォーム(ウレタン)。低音域を強調したい時に。
・上段右側:標準的な弾丸型(黒色)。やや硬め。
・下段左側:標準的な弾丸型(白色)。黒色より開口部がやや広い。
・下段中央:「T-Eartips」として別売りもされている、少しペタペタするイヤピ。
・下段右側:「Sea snail」として別売りもされている、液体シリコンのイヤピ。


④ ケーブルは「銀メッキ無酸素銅(OFC)」と「単結晶銅(OCC)」の混合編組リッツ線。編み込みが美しく、高級感があります。また、しなやかで癖がつきにくく、タッチノイズも少ないので取り回しも良いと言えるでしょう。
端子はフラットタイプの0.78mm 2PIN。今までのTRNはQDCタイプが多かったのですが、TRN SHELLあたりからフラット2Pinが採用されています。リケーブルしやすくて良いですね。


プラグは 3.5mmアンバランス / 4.4㎜バランスのプラグ交換式。ネジ式のロック機構があり、勝手に抜ける心配はありません。
正直、音質面・使い勝手の面でかなり品質の高いケーブルなので、下手にリケーブルするよりはこのまま使った方が良いかもしれません。プラグ交換式で簡単に3.5mm / 4.4㎜の切り替えができるのも良いですね。


⑤ ケースはプラスチック製のハードケースで、本体、ケーブル、イヤピ位なら十分入るくらいのサイズ感です。ストラップ付で、持ち運びにも便利です。


⑥ 説明書。日本語での記載もあります。
なお、100〜500時間のエージングが推奨されています。いつものTRNですね。
本体・装着感等について
本体・造形について

本体はディープブルーの重厚感ある金属製、網目状の内側からはクリアブルーのサファイアガラスが顔をのぞかせます。
ジンベエザメをイメージした重厚な金属筐体の奥でサファイアガラスが神秘的に輝く、深海の美しさを凝縮したような高級感あふれるデザインです。


ピンの端子部分は凹みのないフラットタイプの0.78mm 2PINです。
ノズルは返しが付いているので、大抵のイヤーピースは装着できると思います。
装着感について
本体は金属製で片側約7.5gと一般的な樹脂製イヤホンよりも重めです。
ただ、形状が良く耳へのおさまりが良いため、フィット感は意外と高いです。また、金属製ですが角が丸く処理されており、長時間着けていても不快感は少ないです。
ただし、そこそこ重さがあるのでイヤーピースのサイズが合っていないと重さに負けてズレてきたり、しっかり密閉されなかったりするのでイヤーピース選びが大事になります。
個人的には先述した付属の「T-Eartips」「Sea snail」がグリップ力が高くお勧めです。

音の感想
視聴環境
・アラサー男の耳 (16000hz)、ドンシャリ(V字、W字)好き
・エージング 100時間
・Fiio JM21 → 本機(EQ、フィルター無し、Lowゲイン)
・音量大きめ(音漏れが聞こえるくらい)
・ノズル 緑ノズル(Reference)
・ケーブル 標準(4.4㎜)
・イヤピ 標準(T-Eartips)
・主なリファレンス曲(flac音源)
〇藤井風『満ちていく』
〇米津玄師『海の幽霊』
〇RIIZE『Boom Boom Bass』
〇凛として時雨『Telecastic fake show』
〇Vaundy『life hack』
〇女王蜂『01』
〇鹿乃『優しさの記憶』
〇星街すいせい『綺麗事』
〇milet『inside you』
〇宇多田ヒカル『First Love』
〇トゲナシトゲアリ『雑踏、僕らの街』
〇HIMEHINA『LADY CRAZY』
〇アイナ・ジ・エンド『Love Sick』
〇梶浦由記 『「Fate/stay night [Heaven's Feel]」コンサート』
全体的な印象について
全体的な音色はニュートラル〜やや寒色寄りの印象。
基本はクッキリしたサウンドですが、中~低音域がTRNにしては滑らかというかややウォーム寄りというか、乾いていたり冷たくなりすぎたりせず、ちゃんと熱量のある音を聞かせてくれます。
とてもエネルギッシュかつ力強く、音が遠くで鳴るのではなく、近くで熱気を持って鳴るタイプです。
平面駆動ドライバー特有の高音域の解像度の高さや金属的な響きが印象的です。
一方で、低音域も"厚み"と"熱み"があり、ボワつかずに深く沈み込みつつも芯の強さがあるサウンドになっていて、物足りなさは感じさせません。
かつギターやピアノなどの楽器も迫力があり、ボーカルも近さと適度な艶感があります。
解像度は高く、音の輪郭もしっかりと感じ取れますが、あまり角は感じず滑らかさも有している印象です。
一方、迫力ある鳴り方をするので、やや密度が高く聴き分けにくいと感じる場面もありました。
全体的にハイブリッドの強みを活かし、明瞭感がありながらも熱量と迫力のあるサウンドに仕上げている印象でした。
TRNらしくリスニング特化で、分析的に音を拾うモニターライクな音ではなく、音楽を楽しく聴かせることに特化したチューニングだと思います。
なお、個人的にはやや音量は大き目の方がバランス良く感じましたが、聴覚に悪影響のない範囲でほどほどに。
ちなみに、個人的な所感としては本領発揮まで少し時間がかかるため、エージング(バーンイン)推奨です。

※周波数特性:公式販売ページより
各音域について
低音域
迫力、弾力感、スピード感のある低音域です。
全体的な量感としては普通~やや多めくらいですが、10.5mmベリリウムメッキダイナミックドライバーという大型なドライバーが専任しているだけあって、物理的なインパクトは想像以上に体感できます。
ミッドベースは芯が硬くアタック感が強いですが、弾力とともに響きには柔らかく豊かな余韻があるように感じます。
サブベースも深く伸びており、イヤーピースの密閉度にもよりますが、「深海」とまではいかないまでも、海中の昏い景色を感じられるくらいにはディープです。
程よい響きを持ちながらもボワつきを感じないのは重い金属筐体のおかげかもしれません。
全体的を通して見ると、「WhaleShark」の低音域は迫力がありつつも十分制御されており、他音域をマスクすることは殆どない印象です。
個人的には他音域との調和が取れつつも、十分インパクトのある低音域だと感じましたが、極度のベースヘッド(低音狂)にはあと一歩物足りなさがあるかもしれません。
※イヤピの調整を忘れずに!
中音域
迫力がありつつも、滑らかで適度な艶感のある中音域です。
ドンシャリ傾向のチューニングであるため、物理的な定位は一歩下がった位置に感じられますが、強力な低音域と煌びやかな高音域に埋もれることなく、十分な存在感があります。
TRN製品によくあるドライでパリパリとした感じではなく、質感はややウォームかつ滑らかで、ボーカルや楽器類には艶やかな響きと豊かな表現力を感じられます。
女性ボーカルは高音域の伸びの良さも相まって明瞭さと迫力が秀逸です。特にハイトーンボイスの抜けるような気持ちよさと力強さは特筆すべきものがあります。
男性ボーカルに関しても、ハイトーンのボーカルはエネルギッシュに、低いトーンのボーカルは痩せることなく十分な厚みを持って鳴らしてくれます。
なお、全体的に耳に刺さるピークは上手く抑えられていますが、音量を大きめにすると曲によっては歯茎音(s,tの音)や、ギターの刺さりが気になることがあります。
これはノズル交換やイヤーピースの変更、エージングなどで改善することがあるので、気になった際には試してみることをお勧めします。
全体を通してみると、分析的に聴くというよりは、比較的近めの距離感で、楽器とボーカルが一体となって迫ってくるような、熱量と没入感の高い中音域だと感じました。
高音域
低~中音域までの印象とは異なり、明瞭でパリッとした高音域です。
特に6mm平面駆動ドライバーのおかげか超高音の伸びと抜け感が秀逸です。
また、シンバルなどのアタック感や輪郭をはっきり感じ取ることができつつも、不快なピークは本当に巧みにロールオフされている印象です。
明るく金属的な表現力にも長けた高解像度な高音域でありながら、エッジが効き過ぎていないので、聴き心地が良いです。
全体を通してみると、迫力と熱量のある低~中音域に加えて、クリアで爽やかさを感じる高音域が良いアクセントになっている印象です。
なお、前述の通り音量によってはやや刺さりが気になる可能性があります。
空間表現(ゲームでの利用等)について
サウンドステージは上下左右ともやや狭めな印象ですが、高音域の抜け感が良く奥行きを感じられるのでそこまで窮屈さは感じません。多ドラの利点を生かしハイブリッドを上手く制御している印象です。
ホールで俯瞰的に聴くような音楽鑑賞には向かないかもしれませんが、個人的にはライブハウス的な迫力を感じられる近さがあって、これはこれで良いなと感じました。
定位感も良く、ボーカルが真ん中にしっかり位置しつつ、ロックバンドの編成のように近距離間で綺麗に位相が結ばれている印象です。
なお、定位感は良いのでゲームやASMRでも使えないことはないと思いますが、圧が強めかつ空間が近めで音楽特化という感じなので、銃声や環境音が強すぎるという印象で積極的にはお勧めしません。(RPGなどで迫力を楽しみたい時には良いかもしれませんが。)
おわりに(感想・まとめ)
大型DDによる弾力と沈み込みを感じる強力な低音域。平面駆動由来の、パリッとして抜けが良い巧みに制御された高音域。滑らかかつ近距離で迫力のある中音域。
「TRN Whale Shark」はハイブリッド構成の強みを最大限に活かし、各帯域で異なる魅力を引き出してくれる、リスニング向けの楽しいドンシャリイヤホンでした。
全体として目指すサウンドが明確で、世界観として完成度が高い印象です。
空間表現はややタイトで近く密度が高いため、広大なサウンドステージを求める方や、FPSゲームで繊細な環境音を聴きたい方には向かないかもしれませんが、この迫力感はこのイヤホンの大きな魅力でもあります。
ビルドクオリティの高さや付属品の充実ぶりも含め、約2万円という価格帯の中ではとても満足度が高いので、デザインが嫌でなければぜひ手に取ってみて欲しいイヤホンだと感じました。
気になった方は是非一度聴いてみてください。
さて、今回のレビューは以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。

販売・リンク等
▷公式X:HiFiGo JP 公式
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