
要点
・12mm大型ベリリウムメッキDDによる、深みと弾力のある低音域
・刺さりのない、いつまでも聴いていられるマイルドな高音域
・ボーカルが近く、艶と厚みのある中音域
・セミオープン構造による抜けの良さと自然な広がり
・3.5mm / 4.4mm 交換式プラグ標準付属でアンダー5,000円の高コスパ
・海洋シリーズのエントリーモデルとして高い完成度
まえがき
レビュー#35
今回は TRN の Starfish です。
TRN Audioの海洋シリーズで、2025年秋に発売されたダイナミック型イヤホン「TRN Starfish(ヒトデ)」は、12mm径の大型ベリリウムメッキ振動板を採用し、3.5mm/4.4mmの交換式プラグを標準同梱しながら約4,000円台というパッケージングを実現してます。
上位モデルの「Whale Shark」は約2万円、「SHELL」は約8,000円ということで、「Starfish」は海洋シリーズのエントリーモデルと位置付けられるのではないかと思います。
今回の製品はレビューのため TRN 直営店(Amazon) 様よりご提供いただきました。ありがとうございます。
この依頼に際し、製品提供以外の金品授受その他便宜の提供はございません。また、内容に関して指示等は一切なく、完全に私の知識と経験に基づき感じたままをレビューしています。
「TRN Starfish」は現在 AmazonのTRN直営店 で販売中です。
仕様
スペック
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ドライバー構成 |
1DD (12mm ベリリウムメッキ振動板 ダイナミックドライバー) |
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周波数特性 |
20Hz - 20,000Hz |
| 32Ω | |
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感度 |
113dB |
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プラグ形状 |
交換式プラグ (3.5mm シングルエンド / 4.4mm バランス 付属) |
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ケーブル仕様 |
4芯 銀メッキ無酸素銅(OFC)ケーブル |
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ケーブル長 |
1.2m ± 3cm |
| 装着方式 |
耳掛け式 (カナル型) |
ドライバー



Starfishは12mmの大型ベリリウムコーティング振動板を採用した、ダイナミックドライバー一発のいわゆる1DDイヤホンです。
ベリリウムメッキ振動板は、軽く剛性が高いことから、低歪み、透明感、スピード感、キレ等を実現します。また、ベースとなる樹脂素材が持つ「温かみや豊かな低音」を活かしつつ、表面のベリリウムが「音の立ち上がりや解像度」を補強することで、聴き疲れしないマイルドな質感とクリアな響きを両立できる点が特色です。
Starfishは12mm大型ダイナミックドライバーを搭載。Hi-Fiレベルの強力な磁気回路構造により、ダイナミックで俊敏な音響応答を実現。低音は奔流する波のように、中音は海面のきらめきのように、高音は清冽な海風のように。大自然の中に身を置くような、独特の自然なリスニング体験を創出。
Starfishは12mmのベリリウムコーティング振動板を採用。高剛性と優れた减衰振动特性を備えています。卓越した高域の伸び、強力なディテール解析力、自然で豊かな音質を実現。よりクリアで透き通った音質を表現することができます。特に音楽の細部や階層を表現するのが得意で、音に透明感とダイナミックさを持たせることができます。
※仕様情報・画像等については公式販売ページより引用
付属品や外装

「Starfish」のパッケージはこんな感じ。
光が当たるとホログラムのようにキラキラ輝きます。


箱自体は小ぶりで、パッケージングはシンプルです。

内容物は①本体、②イヤーピース、③ケーブル(交換プラグ)、④説明書等。
シンプルながら欲しいところは押さえた構成。
交換プラグ、3種のイヤーピースが付いておりこの価格帯なら十分でしょう。



② イヤーピースは3種類、各3サイズ。
一番右の透明なシリコン製イヤーピースは「T-Eartips」として別売りもされている、少しペタペタするイヤーピース。個人的には一番フィット感が良くおすすめです。
他の2種類は標準的な弾丸型イヤーピースです。

③ ケーブルは4芯 銀メッキ無酸素銅(OFC)ケーブル。
「Redchain(赤鏈)」という名前の「TRN Conch」にも付属しているケーブルです。
タッチノイズが少なく、取り回しも良いですがやや絡まりやすいです。
端子はQDCタイプの2PIN。
発売日の近い「SHELL」や「WhaleShark」ではフラット2Pinが採用されているので、汎用性的にはこちらも統一してくれれば有難かったのですが…まあ安価なモデルなのであまり贅沢は言えないでしょう。
プラグは 3.5mmアンバランス / 4.4㎜バランスのプラグ交換式。
特にねじ式等のロック機構はないので引っ張れば簡単に抜けます。そのため引っ掛けたりして不意に抜けないよう注意が必要です。そうそう簡単には抜けないとは思いますが。


正直、エントリーモデルということを加味すれば、音質面・使い勝手の面で必要十分な品質のケーブルです。
特にこだわりが無ければリケーブルせずこのまま使っても問題ないと思います。端子がQDCタイプで汎用性が乏しいですし、プラグ交換式で簡単に3.5mm / 4.4㎜の切り替えができるのは便利ですしね。
④ 説明書。日本語での記載もあります。
なお、100〜500時間のエージングが推奨されています。いつものTRNですね。
本体・装着感等について
本体・造形について

樹脂製の黒色の筐体と、名前の通り「Starfish(ヒトデ)」のモチーフをフェイスプレートに落とし込んだデザインが印象的です。
ヒトデの部分は金属製で、その奥にはメッシュ(網)から内部が見えるセミオープン(半開放型)の構造になっています。そのためやや音漏れがあります。
ピンの端子部分はQDCタイプの2Pinです。
ノズルは返しが付いているので、大抵のイヤーピースは装着できると思います。
なお、ノズルは固定式で、TRNに多い交換式ではありません。
装着感について
筐体が樹脂製であるため、見た目の割に非常に軽量です。耳にぶら下げている重さを感じにくく、首を振ってもズレにくいです。
耳のくぼみに収まる形なので、筐体の厚みは少しありますが耳の穴が極端に小さい人でなければ問題なくフィットするサイズ感です。
セミオープン(半開放)構造のため、密閉型イヤホン特有の「耳が詰まったような感覚(圧迫感)」がほとんどありません。長時間着けていても鼓膜への負担が軽く感じられます。
なお、前述の通りやや音漏れがあるのと、遮音性はやや低めかなと思います。
音の感想
視聴環境
・アラサー男の耳 (16000hz)、ドンシャリ(V字、W字)好き
・エージング 100時間
・Fiio JM21 → 本機(EQ、フィルター無し、Lowゲイン)
・音量大きめ(音漏れが聞こえるくらい)
・ケーブル 標準(4.4㎜)
・イヤピ 標準(T-Eartips)
・主なリファレンス曲(flac音源)
〇藤井風『満ちていく』
〇米津玄師『海の幽霊』
〇RIIZE『Boom Boom Bass』
〇凛として時雨『Telecastic fake show』
〇Vaundy『life hack』
〇女王蜂『01』
〇鹿乃『優しさの記憶』
〇星街すいせい『綺麗事』
〇milet『inside you』
〇宇多田ヒカル『First Love』
〇トゲナシトゲアリ『雑踏、僕らの街』
〇HIMEHINA『LADY CRAZY』
〇アイナ・ジ・エンド『Love Sick』
〇梶浦由記 『「Fate/stay night [Heaven's Feel]」コンサート』
全体的な印象について
全体的な音色は暖色寄りの印象。
チューニングとしては弱ドンシャリ。
重心はやや低めで、包み込むような深さと弾力がある低音域が印象的です。
解像度はそこまで高くないですが、アンダー5Kという価格を考えると、十分かなと思います。ただ、音数の多い激しい曲でのレイヤリングでは少しごちゃつきや濁りを感じる場面がありました。ぼやけるとまでは言いませんが、高解像感というよりは音楽的な一体感を重視している印象です。
TRNといえば金属的なキレのある音というイメージを勝手に持っていますが、「Starfish」はやや対照的な柔らかい音な印象です。とはいえ、TRNお得意の聴き心地の良いリスニング向けチューニングの上手さは健在です。
ちなみに、同価格帯の1DDイヤホン「TRN Conch」と比べると、全金属筐体で寒色系の高解像度とキレの良い高音域が印象的な「Conch」、セミオープン構造で暖色系の広がりと聴き心地良い低音域が印象的な「Starfish」というキャラクターの違いが顕著です。
なお、個人的な所感としては箱出しだとややボワつく印象があり、本領発揮まで少し時間がかかったため、エージング(バーンイン)推奨です。

※周波数特性:公式販売ページより
各音域について
低音域
芯がありつつも角の取れた、耳当たりの良い感触の低音域です。
12mmという大型ドライバーの恩恵か、空気を大きく動かすような量感たっぷりの低音が鳴ります。しかし、ただボワボワと膨らむのではなく、ベリリウムメッキ特有の制動が効いており、弾力感があります。
なお、量感はやや多めですが、中音域へのマスクは最小限で、うまいことバランスを取っているなという印象です。
アタック感も鋭すぎず、適度な柔らかさとスピード感で、セミオープン構造のおかげか、響きの広がりというか残響感みたいなものもあります。
全体的には量感十分で余韻と広がりがあり、ややウォームな印象。
分析的に聴くというよりは迫力と雰囲気を楽しむタイプだと思います。
中音域
適度な厚みがある、聴き心地の良い音楽的な中音域です。
ドンシャリ傾向ながらボーカルは楽器類よりも半歩前に出てくるような距離感です。オケに埋もれずに、声が主役としてしっかり聞こえる上手いバランスだと思います。
個人的には特に男性ボーカルが良いと感じました。
楽器類はピアノやアコースティックギターの響きが、カリカリに角が立った音ではなく、角の取れた丸みのある優しい音色で再生されます。
全体的には刺さりもなく、柔らかく厚みのある聴き心地の良い中音域で、リスニング向けとして上手くチューニングしてあると感じました。
高音域
煌びやかさよりも自然な伸びと聴き疲れなさを優先した高音域です。
シンバルやハイハットのアタック感や細かい音はしっかりと再現しつつも、金属の硬質な響きは薄く、全体的に丸みを帯びた音になっていて、刺さりはほとんど感じません。
また、高音がマイルドだと音が籠もっていると感じがちですが、セミオープン構造の恩恵か、高音域が頭の中で詰まることなく、スッと外へ抜けていく感覚があります。
全体的には縁の下の力持ちとして、滑らかに角のない音で高音域を彩りつつ、適度な抜け感で空間の広さを演出してくれています。
空間表現(ゲームでの利用等)について
サウンドステージは上下左右とも自然でぼちぼちな広さな印象です。
セミオープンの構造で、全体的な抜け感が良く、特に高音域が良い感じの距離感で位置してくれることで、重心が低めなチューニングながら閉塞感がありません。
なお、定位感は悪くはないのでFPSゲームでも使えなくはないと思いますが、音楽的な一体感を優先しているイヤホンなので、ピンポイントな位置特定や把握はモニターよりなイヤホンに比べるとやはり劣ります。
RPGなど位置把握が重要ではないゲームでは、適度な迫力があって良いと思います。
おわりに(感想・まとめ)
「Whale Shark」「SHELL」のレビューに続き、「Starfish」を聴き込んでみましたが、やはりTRNはリスニング向けイヤホンを作らせたら敵無しだなと感じました。
4,000円台というエントリー価格帯でありながら、12mmベリリウムメッキドライバーに交換式プラグ標準装備というポイントを押さえたパッケージング。
金属的なバキバキの高解像度サウンドやモニターライクなサウンドを求める方には向かないでしょう。そういった用途には、同価格帯なら「TRN Conch」の方が適任だと思います。
ただ、その特徴的なデザインと聴き心地の良いウォームなサウンドは、シリーズの中でもキャラクターが立っており、唯一無二と言えます。
お求めやすい価格で完成度の高い製品なので、気になった方には是非聴いてみて欲しいですね。
さて、今回のレビューは以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。

販売・リンク等
▷公式X:TRN 直営店(Amazon)
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