要点
≪GOOD≫
・不快感のないバランスの取れたチューニング
・暖かみがあり自然で聴き心地の良い音色でずっと聴いていられる
・適度に制御された臨場感ある低音域
・やや控えめながらも抜け感のある高音域
・音場は近いが定位感と分離感は優れており適度な広さを感じる
・本体は軽く、優れた装着感で長時間の着用でも気にならない
・装着感の優れた使い勝手の良いイヤーピースが付属している
≪NOT GOOD≫
・突出しすぎないよう調整されているため、物足りなさを感じるかも
・暖かみの部分のややぼやけた印象、特に中音域は好き嫌いが分かれそう
・解像度は価格なりに良いが、細部まで完全な表現とまではいかない
・付属のケーブルは細く絡まりやすいのと、4.4mmの選択肢が欲しかった
まえがき
こんばんは、感想文番外編(案件編#2)です。
今回は前回レビューしたKiwi Ears Allegro Miniと同時期に発売された2DD+2BA構成のイヤホン、Kiwi Ears KE4のレビューです。
正直最初は低音が特徴的だけどパッとしないかもと思ったのですが、聴いていくうちにそのあまりの聴き心地の良さにお気に入りになり、気が付いたらずっと聴いてしまうようなスルメイヤホンでした。
バーンインなしで箱出しから一週間程度使ってみた感想を以下で詳しく見ていければと思います。
なお、今回の製品はレビューのため Linsoul_JP 様よりご提供いただきました。
この依頼に際し、製品提供以外の金品授受その他便宜の提供はございません。また、内容に関して指示等は一切なく、完全に私の知識と経験に基づき感じたままをレビューしています。
内容物とか
パッケージはごくシンプルで、本体の保護シールなどもありません。
内容物も必要十分といったところです。KiwiEarsが比較的安価で高クオリティの製品を送り出している秘訣はこういう部分にもあるかもしれません。
本体以外の内容物は、①ケース、②ケーブル、③イヤーピース(1種類・3サイズ)、④替えのノズルフィルター、⑤説明書と、シンプルな構成です。
特筆すべきは③イヤーピースでしょうか。
付属のイヤーピースはKiwi Ears Flexとして販売されており、医療グレードのシリコン製でサラサラとした感触です。SpinFitのように傘の上部、ノズル部分が柔軟に曲がって装着感を高めてくれるとともに、耳垢防止のフィルターが付いている点も独特です。
②ケーブルは細身で柔らかく、取り回しは悪くないですがやや絡まりやすいです。顎スライダーは緩めであまり機能しません。
カラーリングや見た目は悪くないのですが、4.4mmオプションが無く、音質的にも必要十分ながらもごく普通の標準ケーブルという感じなので、リケーブルするのもアリだと思います。
イヤホン本体
筐体は樹脂製で、デザインはシンプル。後方にはベントがあります。
フェイスプレートにはシルバーのアルミ?っぽいロゴの刻まれたプレートが埋め込まれています。外側は樹脂で覆われているので傷はつきにくそうです。
ノズルの口径は標準的で、返しも付いているため、大抵のイヤーピースを装着することができると思います。
コネクタ部分は0.78mmのフラット2pinでリケーブル可能。
ドライバーは2DD+2BAの構成です。
各ドライバーの特徴は以下の通り。
2つのKiwi Earsカスタム10mmダイナミックドライバーは、サブベースのインパクトとスラムに焦点を当て、キックドラムやベースギターの存在感を際立たせます。
カスタマイズされた換気システムを備えたRAD 33518 BAドライバーは、低音と中音域のシームレスな統合を保証し、豊かで質感のあるボーカルや楽器を提供します。アメリカ製のKnowles RAD 33518ツイーターは、優れた高周波拡張性を持つ、清らかで自然な音のトレブルを提供し、空気感のあるサウンドを実現します。
※Amazon 販売ページ より引用
音の感想
視聴環境
①スマホ&DAC Pixel7a + AllegroMini
②DAP HiBy Music R6 Pro II
・ケーブル 標準(3.5mm)
・イヤピ 標準(KiwiEars Flex)
・リファレンス曲
〇藤井風『死ぬのがいいわ』
〇King Gnu『どろん』
〇凛として時雨『Telecastic fake show』
〇Owl City『Good Time』
〇milet『inside you』
〇宇多田ヒカル『First Love』
〇トゲナシトゲアリ『闇に溶けてく』
〇LE SSERAFIM『FEARLESS』
今回は①と②の2種類の環境で視聴しました。
結果としてはKE4は比較的出力の低いAllegroMiniでも十分鳴らせましたが、個人的にはより解像度や臨場感を高めるためにもある程度パワーのあるアンプを使用することをお勧めします。
また、リケーブルしバランス化すると音の迫力と解像度がアップし、好みの音色にも変えやすいので、リケーブルに拒否感のない方にはお勧めします。
イヤーピースはフィルターが付いている点、低音を強調する傾向がある点が嫌でなければ、装着感が良い標準のものでも悪くないと思います。
より高音を強化したいなどがあれば、お好みの物に付け替えるのも良いでしょう。
全体的な印象
まずは第一印象の話ですが、KE4の低音が前面に来て、暖かみのある中音域と、やや控えめな高音域は、手持ちのイヤホンの中でAFUL Explorerに近いなと感じました。
ただ、よくよく聴いていると、全体的なバランスには近しいものを感じつつも、KE4にはExplorerにあった、音が籠ってやや暗い音に聴こえるような印象は薄く、高音域の抜け感もより優れていると感じました。
KE4は音場の近さは感じるものの、定位感と分離感は優れていて、高音域の空気感も相まって窮屈な感じのない適度な広さの空間を表現できている印象です。
これはあくまで好みの話ですが、Explorerの全体的な聴き心地の良いバランスは好みだったものの、狭く窮屈な感覚が惜しいなと感じていた自分にとっては、KE4はかなり好ましいチューニングでした。
公式でも以下の通り述べていますが、
KE4は、新しいターゲットチューニングに従い、正確なサブベースのインパクト、温かみのある自然な中音域、そして正確なトレブルを強調しています。この音質特性は、何年もかけて洗練されてきたもので、最も自然で魅力的なものだと私たちは信じています。
と、まさに目指すところを実現している感じがします。
※Amazon 販売ページ より引用
また、やや特徴的な低音域以外は突出して耳につくような部分がないため、やや大きめのボリュームで聴いても不快感がありません。
あまりにボリュームを上げすぎると聴力に悪影響があるので推奨はしませんが、いつもより少しだけ音量を上げてみると、ダイナミックで音に包まれるような感覚を味わうことができます。
各音域について
◎低音域
何といっても特徴的なのは2機のダイナミックドライバーが表現する重厚な低音域です。
KE4の低音はやや前面で、しっかりとした存在感があり、特にミッドベースのアタック感が効いています。
サブベースも深く響き、インパクトがありますが、過剰に膨張はしていない印象です。タイトで完全に制御されているとは言い難いですが、リズミカルに楽曲の基盤をしっかりと支える役割を果たしています。
個人的には特徴的ながら出しゃばりすぎない、絶妙な、かなり良いバランスだと感じています。
裏を返すと低音を好まない人からするとやや前に出過ぎている感じがするでしょうし、ゴリゴリの低音を期待すると逆に物足りなさを感じるかもしれません。
◎中音域
全体的に自然な暖かみのある聴き心地の良いサウンドです。
クリアで分析的な音色ではないので、そういった傾向を求める人には向かないかもしれません。
ボーカルは自然で滑らかな聴きやすい音色で、男性ボーカルは重厚に、女性ボーカルは伸びやかな印象です。
ただ、曲によって近さを感じたり、やや奥まって聴こえたり少し不思議な感じもあります。
バラードなどテンポの遅い曲ではあまり奥まった感じはしなかったので、楽器の音数が多いと埋もれやすいのかもしれません。音場は近いけどボーカルをブーストしているわけでもない、というところが影響している気もします。
ピアノ、ギター、シンセなどの楽器も、曲によっては、ややベースに押されて後ろに下がる感じがありますが、分離感も優れているため、それぞれ自然で豊かな音色で鳴っていることを聴き取ることができると思います。
◎高音域
高音域は、煌びやかでクリアながらも、過度にシャープではなく、棘のないチューニングです。正直かなり好みのバランスです。
低音域や中音域に比べると一見控えめに聞こえますが、全体のバランスの中では確かな存在感で自然な空気感と適度な抜け感を表現してくれています。
また、音量を上げても不快感を感じにくい絶妙な調整で、歯茎音やシンバルの音で刺さりを感じることはありませんでした。
ただし、響きを細部まで完全に表現しきれているかといえば首をかしげるところで、アタック感の面でも中華イヤホンに多いドンシャリチューニングの鋭い高音域を期待している人には物足りないかもしれません。
おすすめリケーブル(暫定)
NICEHCK HugLaura(4.4mm)
バランス化。音場の広がりや低音の質がより良くなり、また、全体的に解像度が上がってボーカルの奥まった感じも改善する。
Angelears x Yongse Mars(4.4mm)
バランス化。音の明瞭さと空間の広がりが増す。よりタイトな低音とクリアな高音。
SoundsGood Cassiterite(4.4mm)
バランス化。全体的にクリアで見通しの良い印象。標準に近い色合いで見た目が良い。
ゲームでの使用について(余談)
個人的にゲームでの使用も悪くないと思います。
FPS(Apex)で使用した感想としては、定位感と分離感が良いため、足音を正確に聞き分けることができました。また、高音域が抑え気味なのでキンキンと刺さることもありませんでした。
ただ、低音が強いため対人ゲームだとやや他の音の邪魔になるかもしれません。
それ以外のゲームなら臨場感が出てむしろ向いていると感じました。
また本体が軽く長時間着けても負担が少ないこと、装着感が良く遮音性にも優れている点はプラスだと思います。
普段ゲーム用のイヤホンに拘りがなく、検証もあまりしていないのであくまで参考まで。
音の感想(まとめ)
適度に制御された迫力ある低音域、暖かみのある自然な中音域、やや控えめながらも抜け感のある高音域のバランスが取れたチューニングで、聴き心地が良くずっと聴いていられます。
テンポの速い曲も十分こなせる印象はありますが、どちらかといえば、ゆったりとした曲の方が合う気がします。
音場はやや近いですが、定位感と分離感は優れており、高音域の空気感も相まって適度な広さを感じることができます。
一方で、突出した部分が少ないが故に物足りなさを感じることがあるかもしれません。
また、大前提として低音の主張が好みでない人には合わないこと、中低音域が暖色傾向である点や、曲によってボーカルがやや奥まって聴こえることがある点は好みが分かれそうです。
おわりに(オススメ度)
★個人的なオススメ度(※) : 8.5/10(リケーブル込みだと9点)
◎各音域に対する満足度
・低音域 : 9/10
・中音域 : 8/10
・高音域 : 8.5/10
◎空間表現に対する満足度 : 8.5/10
◎装着感に対する満足度 : 9/10
◎デザインや造りに対する満足度 : 8/10
◎付属品や外装に対する満足度 : 7/10
※各項目の平均点ではありません。また、商品に優劣をつけるための点数付けではなく、価格に対する自分の満足度です。
※9/15時点、$199の場合の満足度です
最初は突出した部分が無いために200ドルは高いかも?と思いましたが、聴き込んでいくにつれて、このバランスの良さを高水準で達成しているKE4はかなり優秀なのではと思い直しました。
(構成も価格帯もやや異なるので賛否あるかもしれませんが、個人的に最終的な印象はExplorerの進化系でした。)
実際、暖かみのある自然な音で聴き心地の良さで、とりあえず迷ったら使いたくなり、気が付くとずっと付けたまま音楽を聴いているというスルメイヤホンでした。
あまり刺激的ではない聴き心地の良いイヤホンを求めている方にお勧めです。
さて、今回のレビューは以上になります。
普段もっと高音域が鋭く、ハキハキとした印象のドンシャリ傾向のイヤホンを聞くことが多いので、こういった傾向で好みのイヤホンもあるんだなと知ることができたのは嬉しい発見でした。
今回ご提供くださったLinsoul様はもちろん、こんな素人の感想文を見てくださっている皆様のおかげでこういった機会を頂けたことに感謝しています。
今後も自由に楽しく思ったまま、感想文を綴っていきたいと思います。
ではまた。
販売価格/リンク
◎各ECサイトの販売価格
(※2024/9/15時点の価格であり、変わる可能性があります)
現在、LinsoulのECサイトでは KiwiEars KE4 と AllegroMini がセットで$223 USD のところ、 $209 USD で購入できます。
Amazon 販売ページ:KE4単品 29,200円
Linsoul 販売ページ :KE4単品 $199 USD ≒ 28,026円
AllegroMiniセット $209 USD ≒ 29,434円
◎Linsoul_JPのポータルサイト:https://linktr.ee/linsouljp