要点
・ややウォーム寄りの聴き心地が良いドンシャリで、「静かな海」に漂うようなリラックス感のあるサウンド
・低音域は包み込むような量感と弾力を備え、特にミッドベースが力強い
・中音域は柔らかく滑らかな音質で、ボーカルが自然に前に出る
・高音域は明るくクリアながら刺さることのない安全なチューニングで疲れにくい
・三角形のユニークな形状ながら、フィット感が良く長時間の使用でも快適
・このパッケージだけで完結できるような充実した付属品
・前作とは音づくりが異なるので、純粋な進化形を想像すると肩透かしかも
まえがき
レビュー#18
今回は ROSESELSA (Rose Technics) の QuietSea II (静海2)です。
QuietSea Ⅱは、高い評価を得たシングルダイナミックドライバーIEM「QuietSea」の第2世代モデルです。
ビジュアル的には前作と同じような外見ですが、中身は完全に新設計されており、ダイナミックドライバーや端子など、多くの違いがあります。
前作との比較もしつつ、レビューしていきたいと思います。
なお、今回の製品はレビューのため ROSESELSA 様よりご提供いただきました。ありがとうございます。
この依頼に際し、製品提供以外の金品授受その他便宜の提供はございません。また、内容に関して指示等は一切なく、完全に私の知識と経験に基づき感じたままをレビューしています。
QuietSea IIは現在、HiFiGo 及び Aliexpress で発売中です。
付属品や外装




QuietSea IIのパッケージはこんな感じ。
1万円くらいのイヤホンにしてはそこそこ豪華なパッケージです。
パケ絵の女の子(Rose Technicsのブランドキャラクター「ROSIE」ちゃん)が可愛いですね。
内容物は①本体、②イヤーピース(2種類)、③ケーブル(交換プラグ)、④アクスタ・シール、⑤説明書です。


②イヤーピースは2種類の各4サイズ。
楕円形の透明なイヤーピースは液体シリコン製で、「Soundcocoon」として別売りもされているイヤピの楕円形Verです。
かなりクオリティの高いイヤーピースで、このレベルのイヤピが付属しているのは有難いですね。
なお、楕円Verは「Soundcocoon」本家と比べると軸がやや短く、傘の高さが低いです。もし「Soundcocoon」をTWS用に開発したらこんな感じではといった形状です。
正円形の不透明なイヤーピースはいわゆるワイドボア的な形状で、QuietSeaⅡのやや太めのノズルにぴったり合います。
液体シリコンイヤピのフィット感も良いですが、こちらのイヤピも中々クオリティが高く、液体シリコンイヤピが苦手な方でもうまく使えるのではないかなと感じました。
元々硬めのイヤピの方が好みなので、個人的にはこちらの方を使っています。
③ケーブルは布製の被膜で、線材は4芯の5N無酸素銅。
布製故にタッチノイズがやや気になりますが、スライダーもしっかり機能しますし、全体的なクオリティは高いと思います。
何より、プラグ交換式(3.5㎜/4.4㎜)なのは有難いですね。


④アクスタ・シールもオマケにしてはけっこうクオリティが高い気がします。
まあ必要かといわれれば……ROSIEちゃん可愛いサイコー!!
本体・装着感について
本体・造形について
QuietSea IIのカラーバリエーションは「シルバー」「ブルー」の2種類。
今回は「ブルー」を提供いただきました。
ややマットな質感の金属部分と、クリアで中の構造が見える樹脂部分が組み合わさっています。個人的にはかなりイカしたデザインだと思うのですがいかがでしょう。



ノズル部分の径は約6㎜。やや太めですね。
筐体自体はやや小さめ。この薄さなら寝ホンにも良いと思います。
装着感について
QuietSea IIは三角形の独特なデザインをしていますがかなり装着感は良いです。
膨大な3D耳道データをもとに精密設計されており、ユニバーサルな形状であらゆるリスナーに快適な装着感を保証します。(公式販売ページより)
変な圧迫感もなく、長時間のリスニングでも不快感を感じませんでした。
ドライバー
構成としては、ダイナミックドライバー一発の、いわゆる1DDの構成ですね。
Quiet Sea 2には、全く新しいデュアルマグネティック・デュアルキャビティ構造のダイナミックドライバーが採用されています。このドライバーは、多層PEEK基板とカーボン・カッパー真空コートドームの複合ダイアフラムを組み合わせた革新的な構造です。デュアルキャビティ構造と強力なデュアルマグネティックアーキテクチャにより、周波数帯域全体で優れた性能を発揮します。カーボン・カッパー合金ドームダイアフラムは非常に軽量かつ頑丈で、迅速な動作により超低歪みでクリアなサウンドを生み出します。
(公式販売ページより)
とのこと。
つまるところ、「多層PEEK基板」と「カーボン・カッパー真空コートドーム」を組み合わせた空間設計と、強力なデュアル磁気回路により、超低歪みでクリアなサウンドを生み出してくれるようです。
音の感想
視聴環境
・アラサー男の耳 (16000hz)、ドンシャリ(V字、W字)好き
・エージング 50時間
・Fiio JM21 → 本機(EQ、フィルター無し、Lowゲイン)
・音量大きめ(やや音漏れが聞こえるくらい)
・ケーブル 標準(4.4㎜)
・イヤピ 標準(正円形のワイドボアタイプ)
・主なリファレンス曲(flac音源)
〇藤井風『何なんw』
〇米津玄師『海の幽霊』
〇RIIZE『Boom Boom Bass』
〇凛として時雨『Telecastic fake show』
〇Vaundy『life hack』
〇女王蜂『01』
〇鹿乃『優しさの記憶』
〇星街すいせい『綺麗事』
〇milet『inside you』
〇宇多田ヒカル『First Love』
〇トゲナシトゲアリ『雑踏、僕らの街』
〇HIMEHINA『LADY CRAZY』
〇アイナ・ジ・エンド『Love Sick』
〇梶浦由記 『「Fate/stay night [Heaven's Feel]」コンサート』
全体的な印象について
QuietSea IIはニュートラル~暖色傾向で、全体的に角が少なく、聴き心地が良いイヤホンという印象です。
低~中音域を中心にややウォームな鳴り方ですが、変に籠った感じになりすぎず、響きはタイトな感じに制御されておりスッキリとした余韻を味わえます。
チューニングとしてはドンシャリで、重心はやや低めにあります。
低音域は包み込むように、高音域は見通し良く安全に、中音域は表現力豊かに。
名前の通り静かな海に漂うように、ゆったりとしたバラードを聴くのに良いイヤホンだと感じました。
各音域について
◎低音域
懐の深い低音というのでしょうか。タイトになりすぎないことで、包み込まれるような質感があります。
特にミッドベースは量感も十分で、適度な弾力と厚み、力強さがあり、このイヤホンでも特に印象的な部分だと思います。
ベースラインは弾むように、バスドラムは力強く鳴ります。
また、ミッドベースに比べるとやや控えめですがサブベースも十分出ていると感じます。体内に響くような沈み込みは感じないですが、ベースヘッド(低音偏愛)でなければ満足できる位だと思います。
◎中音域
柔らかさと滑らかさを感じる聴き心地の良い音です。
ボーカルは変に強調されることなく、自然に浮かび上がるような印象です。
個人的には男性ボーカルが適度に温かみがあり、艶やかさも感じられて好みでした。
ピアノやストリングスの音は滑らかで、角が立つようなことはありません。
特にスローテンポの曲やバラードをじっくり味わうのに向いたイヤホンだと感じました。
とはいえアップテンポの曲もしっかりと表現できる地力はあると感じます。
◎高音域
適度な明るさと煌びやかさを感じつつも、耳障りに刺さることのない安全な高音域です。
長時間のリスニングでも聴き疲れせず心地よく聴けると思います。
適度な距離感と見通しの良さで、空間の演出にも一役買っている印象です。
また、超高音域を適度にロールオフしていることにより、ボーカルの歯茎音等の不快な響きが生じにくくなっています。(これは詳細な表現力とトレードオフな部分ではありますが)
空間表現(ゲームでの利用等)について
サウンドステージはやや左右の広さを感じます。
ある程度奥行きもあり、平面的すぎる印象はありませんでした。
定位感も十分で、適度な距離感で音が鳴ってくれるので、ASMRやゲームでも没入感や迫力を演出してくれて使い勝手が良いと感じました。
前作QuietSeaとの比較について
音質について
肝心の音質ですが、ドライバから一新しているからか結構違いを感じます。
QuietSea無印(以下、静海1)は寒色寄りで分離感を感じるややドライな音という印象で、ウォームよりなQuietSea II(以下、静海2)とは目指しているところが違う印象があります。
ただ、細かく聴くと解像度自体は静海2も高いため、単純なサウンドクオリティでは甲乙つけがたく、好みの差という感じがします。
チューニングの方向性自体はどちらもドンシャリ(V字)傾向です。
ただ、低音の量感は静海2の方が多く、逆に高音域の存在感は静海1の方が感じました。静海1は重心がやや高め、静海2はやや低めという印象です。
本体について




本体の仕様面での大きな変更として、
・ダイナミックドライバーの変更
・ピンの端子変更(MMCX→0.78㎜ 2pin)
・筐体金属部分の素材変更(亜鉛合金→アルミ合金)
・ノズルの形状変更(楕円→正円)
があります。
ドライバはトポロジカルダイアフラムから多層PEEK基板とカーボン・カッパー真空コートドームの複合ダイアフラムへと変わっています。前述のように音質の方向性が結構異なるのですがやはりドライバの影響は大きいなと感じます。
ピンはより主流で汎用性の高い2pin端子に変わったことで、かなり使い勝手が良くなりますね。
金属素材の変更は違いを感じにくい部分ですが、わかりやすい変化としては本体が軽量化しています。あとはツヤの感じが少しマットっぽくなっていますね。
ノズルの変化も音質に影響しているでしょうが、比較の難しい部分なので割愛します。なお余談ですが、静海2の楕円版「Soundcocoon」が静海1のノズルにピッタリで良い感じでした。
付属品について
イヤーピースの種類は異なりますが、圧倒的に静海2の方がクオリティが高いです。


ケーブルはやや太さが異なりますが、同じ布製の被膜で、線材は5N単結晶銅から5N無酸素銅へと変更されています。
静海1はMMCX端子でプラグ固定、静海2は0.78㎜ 2pinでプラグ交換式です。
イヤーピースの充実や交換式ケーブル、そしてアクスタがある(重要)点を考えると付属品の面でも静海"2”として確かにグレードアップしていると思います。
おわりに(感想)
QuietSea IIはゆったりと素直に音楽を楽しめる、そんな聴き心地の良いイヤホンでした。
このパッケージだけで完結できるような充実した付属品も魅力的です。
個人的には無印との違いも興味深かったです。けっこう方向性変えてきたなと。
もし静海1を持っていて満足しているよ、という人にもぜひ試してほしいですね。
さて、今回のレビューは以上となります。
ではまた、次の記事でお会いしましょう。
(ROSIEちゃんKawaiiサイコー!!)
販売・リンク等(AD含)
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